ハノン教本のNo.39はピアノの12の鍵盤上の全部の長調・短調について4オクターブの上行・下行音階と締めの終止形が書かれています。昔、音楽大学のピアノ科に入るとすぐそれらの試験が全員に課されていました。私はというとどうしてなのか音階など音楽の部類ではないから練習などしなくてもいいんじゃないかと勝手に思い込んでいてさしたる練習もせず試験を受けた結果見事に2回も落ちてしまいました。(自慢にもなりませんが)そんなことはどうでもよくて、実はほとんどの作曲家が作品を仕上げるのに重要な要素として音階を取り入れています。ベートーヴェンの作品にも驚くほどたくさんの音階が用いられています。またそれらが本当に魅力的なフレーズなんですね。それぞれの時代に合った音階の使われ方がその時代の音楽の大きなインパクトを聴くものに与え続けているのは間違いないですし。ある音大の先生がウィルヘルム・ケンプにレッスンを受けたところ、まずある音階をベートーヴェンの音楽として弾くことを求められたそうです。そのあと今度はブラームス風な音階を、さらにシューマン風にというようにいろいろの作曲家の特徴的なタッチに基づいた音階をレッスンの中で経験したというような話をしていたことが印象的でした。同じ音階でもすごい世界があるんですね。