13.複数の連符の同時演奏について(About playing multiple tuplets at the same time)

一拍という言葉は大変色々な単位があり 漠然としたイメージがぬぐえませんので、ここでは「一定の時間」という風に呼び、その間に3連符と2連符とかいう表現もやめて、3つと2つの「相」という言葉で表現したいと思います。ピアノを学習する人が割合と早くぶつかるのが、次に示す右手が3つ左手が2つという一見割り切れないフレーズです。【譜例1ベートーヴェンのロンド Op.51-11】
譜例2の場合、「一定の時間」に上から3つの4分音符と18個の16分音符、12個の16分音符という3つの「相」が同時に存在します。

【譜例2】ベートーヴェン 32の変奏曲より

譜例3のツェルニーの40番練習曲の中に8分の6拍子で1小節に右手は19個の16分音符、左手は8分音符が6つという始まり方の曲がありますが曲中には右手が18個の16分音符とか24個の16分音符という小節も存在しています。これは割り切れる公約数なので、ここはきっちり合わせているのに割り切れない2つの「相」については適当に弾くというようなことが一般的に行われていますが、実は割り切れなくてもそうでなくても適当に弾くのではなく複数の「相」が同時に存在するんだという意識で「きっちりと」演奏するべきなのです。

【譜例3】ツェルニー 40番練習曲集より


私も子供の頃割り切れないのを0.333…というような数値で理解しようとしましたが結局慣れてきて適当に弾けるようになったところで終わっていました。そして器用な人がこれよがしに右手で4つ、左手で3つと振り分けて自慢しているのを見るにつけ、それでは3つの「相」になったらどうするのかと疑問に思っていました。本当の答えは簡単で「一定の時間」に3つと4つの「相」があるんだという認識で演奏する。量子力学的な発想ですがそうでなければ理不尽な譜面の書き方として非難されるような事柄ではないのでしょうか。でも実際はそこで奏でれる音楽は大変魅力的なフレーズが多いんですよね。ということでこのような時はいっぺんに複数の「相」を奏でることが全然不思議な事ではないんだと思ってトライしてみて下さい。